大切な歯を残すための虫歯治療 Treatment to save important teeth
虫歯治療の基本は「削る・詰め物をする」「神経を抜いて被せ物をする」「抜歯」の3つです。ひとくちに虫歯治療といっても進行段階に応じて、治療方法が異なります。軽度の虫歯であれば削って詰め物をするだけですが、神経まで虫歯が進行してしまうと抜歯する可能性が高まります。
「残っている歯の本数と健康寿命が関係している」と考えるように、虫歯はなるべく抜歯せずに治療することが理想的です。当院では患者さんがご納得いただいた上で治療に専念できるよう、丁寧な審査診断とわかりやすい説明を大切にしています。カウンセリング重視の診療で患者さん1人ひとりと真摯に向き合い、その方に必要な治療方法を立案いたします。
symptoms 虫歯の進行と症状
脱灰
虫歯の初期症状は「脱灰」と呼ばれ、虫歯の細菌が出す酸によって歯の表面を覆うエナメル質が溶け始めた状態です。歯の見た目に変化はほとんどなく、痛みもありません。しかし、歯の透明感が失われるため、白く濁ったり、褐色に変化したりする点が特徴です。脱灰の段階では歯を削る治療は必要なく、きちんと歯を磨く、定期的にフッ素塗布をすることで虫歯の進行が阻止できます。
エナメル質の虫歯
虫歯の細菌が出す酸の溶解が進行してエナメル質が虫歯になると、歯に灰色や薄茶色の小さな穴が開いた状態になります。見た目に変化が出るため虫歯に気づく人が増える段階です。この段階の一般的な治療は、虫歯部分を削り、詰め物をするのみです。まだ痛みがないため、麻酔なしで治療できます。
象牙質の虫歯
虫歯がエナメル質を超えて象牙質まで達すると、冷たいものや熱いものがしみる、噛んだ時に痛いなどはっきりとした症状が現れます。また、虫歯部分が黒く穴の開いた状態になるため、異常があることが一目瞭然です。一般的な治療はエナメル質の虫歯と同じく、虫歯部分を削って詰め物をする方法ですが、痛みを伴うため麻酔が必要になります。虫歯の進行スピードも早くなるため、早期治療が重要です。
神経まで達した虫歯
象牙質も突破し、神経と血液が集まる歯髄に虫歯が到達すると、炎症を起こして激しい痛みを伴います。冷たいものや熱いものがしみるだけでなく、歯が欠けたり割れたりする、1日中激しい痛みがおさまらないなど、明らかな異常が現れます。また、歯に穴が開いて黒く変色するため、この段階でやっと虫歯に気づく患者さんも珍しくありません。
歯髄死
虫歯が神経に到達してそのまま炎症が続くと、神経が完全に死んでしまう歯髄死の状態になります。場合によっては周囲の骨に膿が溜まることもあり、この段階から神経を抜く根管治療が必要です。
残根
虫歯の最終段階が残根であり、歯肉の上にある歯が溶けて根っこの部分だけが残る状態です。見た目に明らかな異常がありますが、神経が死んでいる場合は痛みを感じないこともあります。しかし、歯の根の中まで細菌に侵されている状態に変わりはありません。この状態では、歯茎や他の歯に悪影響を与えてしまうだけでなく、血液を通じて細菌が全身に回るリスクがあります。そのため、多くの場合、治療の最終手段である抜歯が選択されます。抜歯後はインプラントや入れ歯、ブリッジのような治療を施します。
痛みを軽減した治療を提供
虫歯治療で最も痛みを感じるのは、処置前の麻酔注射といわれています。痛みを抑えるための麻酔注射で強い痛みを感じては、虫歯治療をより億劫に感じてしまうでしょう。そこで当院では、麻酔注射の痛みをなるべく軽減するため、極細針を用いた麻酔処置を施しています。
さらに、麻酔注射の痛みをより軽減するため、表面麻酔も導入。注射を打つ部分にジェル状の麻酔薬を塗ることで歯肉が麻痺した状態になり、注射針の入る感覚と痛みがさらに軽減します。
また、痛みを軽減するだけでなく、治療の不安やストレスを軽減するため笑気麻酔もご利用いただけます。笑気麻酔は鎮静・鎮痛作用がある笑気を吸入し、リラックス状態にする吸入麻酔薬の一種です。痛みが軽減されるだけでなく、虫歯治療に不安やストレスを感じている方がリラックスした状態で治療に臨めます。
虫歯が神経に達したら、根管治療が必要
歯の中にある神経と血液を含む組織「歯髄」に虫歯が到達した場合、歯髄を除去する「根管治療」が必要です。歯髄に虫歯が達すると強い痛みを伴うだけでなく、そのまま放置してしまうと歯の内部や骨が溶けてしまい、抜歯以外の手段が選択できなくなってしまいます。 歯を残すためにも、根管治療で歯の内部に侵入した細菌をすべて取り除き、再感染を防ぐことが必要です。根管治療することで抜歯が防げるだけでなく、虫歯に伴う痛みや腫れも取り除くことができます。
flow 根管治療の手順
虫歯・神経の除去
麻酔処置の後、歯を削って虫歯を除去しつつ、神経の上にある硬い歯質を削ります。神経が見えてきたら、「ファイル」と呼ばれる根管治療用の細い針を用いて神経や膿を除去します。過去に治療したことがある歯であれば、その時に詰めた薬剤も細菌に汚染されているため、同じように除去していきます。
洗浄・消毒
神経や膿、以前詰めた薬剤を除去すると、歯の根の中は空洞の状態です。空洞になった部分には症状に合わせた薬剤を詰めて、根管を洗浄・消毒します。薬剤を詰めたら仮の蓋をして数日置き、痛みや炎症などの症状が落ち着くのを待ちます。
根管充填
痛みや症状が落ち着いたら、洗浄・消毒して清潔になった根管内に薬剤を詰める根管充填を行います。根管治療の最終目的は根管を清潔にし、薬剤を詰めて根管に細菌が発生するのを防ぐことです。根管の大きさを測り、根管充填で専用の薬剤を詰めて根管を埋めたら、治療した歯に被せものや詰め物を施す治療に進みます。
根管治療を成功させるために必要なこと
根管治療は精密な処置が求められる治療です。当院では根管治療を成功させるため、テレスコープやマイクロスコープなど根管治療に必要な先進医療機器を導入しています。このような高度医療機器があることで、人の目では検知できない部分にまでしっかりとアプローチできるだけでなく、治療の成功率をアップさせます。技術力が伴うことはもちろん、こうした機器に頼ることで質の高い治療をご提供します。
また、根管治療は精密かつ難易度が高い治療であるため、一筋縄では終わらない治療です。神経を除去するため痛みがなくなりはするものの、自己判断で治療を中断してしまうと、根管に細菌が残ってしまうリスクがあります。そうなると、最悪のケースで最終的に抜歯になる可能性も考えられます。根管治療は大切な歯を残すための治療であるため、治療が完了するまで通院し続けていただくことが大切です。